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解離性障害(解離症)

解離性障害(解離症)とは、過度なストレスや精神的負荷(トラウマ)によって、本来であれば一つに統合されているべき「記憶」「意識」「知覚」「アイデンティティ(自己感覚)」などが、一時的に分断されてしまう状態(解離)を指します。

解離性障害(解離症)を正しく知る目的

この解離性障害(解離症)について知る最大の目的は、自身の心身に起きている不可解な現象を正しく理解し、適切な医療介入への道筋を見つけることにあります。

  • 「自分が怠けているからだ」と責めるのをやめる
  • 「頭がおかしくなってしまった」という過度な不安を解消する
  • 脳と心が限界を迎えた結果としての防衛反応であることを認識する

これらを理解することが、回復への第一歩となります。

解離性障害(解離症)の原因

解離性障害の主な原因は、個人の処理能力を遥かに超えた強烈な心理的トラウマや、慢性的かつ過酷なストレス環境です。脳が過剰な苦痛から心を守るために、一時的に「自分を麻痺させる(現実から切り離す)」システムを作動させることで発症すると考えられています。

具体的な原因の事例

  • 過去の急性・慢性的トラウマ: 幼少期の虐待、ドメスティック・バイオレンス(DV)、大災害や重大な事故の目撃・体験など
  • 大人のストレス環境: 企業における長時間の過重労働、パワーハラスメント(パワハラ)、職場での孤立無援な人間関係など

特に大人の場合、過去のトラウマが未解決のまま、日常的な労働ストレスの蓄積が引き金となって発症する事例も多く報告されています。

解離性障害(解離症)の症状

具体的な症状の内容は多岐にわたりますが、主に以下のような形で現れます。

代表的な症状の内容

  • 解離性健忘:ある特定の時期や、強いストレスとなった出来事の記憶が完全に抜け落ちてしまう状態。
  • 離人症・現実感喪失症:自分の身体から心が離れて幽体離脱しているように感じたり(離人症)、現実世界が霧がかかった絵空事のように現実味がなく感じられたりする状態(現実感喪失)。
  • 解離性同一症:周囲から見ると別人のように人格が切り替わる状態(いわゆる多重人格)。人格ごとに異なる記憶を持つことが多く、生活に大きな支障をきたします。

周囲に誤解されやすい注意点

これらの症状は本人の意思でコントロールできるものではありません。 しかし、客観的な診断が難しいため、周囲から「嘘をついている」「サボっている」「演技だ」と誤解されやすく、これが二次的な精神的苦痛(孤立やうつ状態の悪化)に繋がりやすい特徴があります。

解離性障害(解離症)に関連しやすい主な疾患

解離性障害は単独で現れるだけでなく、他の精神疾患を合併しやすい、あるいは他の疾患の影に隠れているという特徴を持っています。

うつ病

解離症状(記憶の欠落や離人感)への強い不安や、周囲からの誤解によるストレスが長期化することで、二次的にうつ病を併発する頻度が高いことが知られています。

不安障害

「いつまた記憶が飛んでしまうか分からない」「人前で人格が変わったらどうしよう」という予期不安から、強いパニックや外出恐怖を引き起こし、日常生活に支障をきたすケースがあります。

睡眠障害

深刻なトラウマによる悪夢や、過去の記憶が突然蘇る「フラッシュバック」などは、睡眠の質を著しく低下させます。不眠による脳の疲労は、解離症状をさらに悪化させる悪循環を生みます。

発達障害(神経発達症)

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの特性を持つ方は、社会生活で慢性的な生きづらさや強いストレスを感じやすいため、その防衛反応として解離症状を引き起こすベース(背景)となっていることがあります。

産業医や人事労務の現場において、「うつ病による休職」と診断されていた社員の背景を専門医が詳しく紐解いたところ、実はその根底に重大なハラスメントや過重労働による「解離症状」が隠れていたという事例も少なくありません。表面的な症状だけでなく、根本的な原因を見極めることが重要です。

解離性障害(解離症)の治療

解離性障害の治療は、お薬だけで根治させることは難しく、医師による精神療法や、公認心理師・臨床心理士によるカウンセリング(心理療法)を主体として進められます。

回復のためのプログラム

治療は焦らず、本人の心の安全を最優先に段階を踏んで進めていきます。

  • ステップ1: 患者様が「ここは絶対に安全だ」と思える環境(休職や周囲の理解など)を整え、心身への過度なストレスを遮断します。
  • ステップ2: 規則正しい生活リズムを整えます。解離そのものを治す薬はありませんが、随伴する「うつ症状」「強い不安」「不眠」に対しては、適切な薬物療法を併用することで心身を安定させます。
  • ステップ3: 状態が十分に落ち着いた段階で、少しずつトラウマとなった過去の整理や、新たなストレス対処法(コーピング)を身につけ、再発を防ぎます。
  • 根本的な治療の成功には、患者様と医療スタッフ、そして周囲の環境との間に強固な信頼関係を築くことが不可欠です。

解離性障害(解離症)の対面診療

解離性障害の診断や治療では、症状が起きる背景(環境)や、生活のなかでどのような困りごとが生じているかを正確に把握するため、丁寧な対面診療が不可欠です。

診察の内容

対面診療では、主に以下のような点を確認・評価していきます。

  • 症状の経過確認: 記憶がなくなる頻度や期間、現実感が薄れるシチュエーションなどの詳しいヒアリング
  • 既往歴や背景の確認: 過去に経験した強い心理的トラウマの有無や、現在の職場・家庭でのストレス環境の把握
  • 精神状態の確認: 抑うつ状態や強い不安感、その他の精神症状がどの程度影響しているかの評価

必要に応じた検査・連携

「意識が飛ぶ」「体が勝手に動く」といった解離症状は、脳の器質的疾患や、脳の電気的異常である「てんかん」などの身体疾患(神経内科領域の病気)と症状が酷似しているケースがあります。そのため、正確な診断(鑑別診断)を目的として、必要に応じて以下の対応を検討します。

  • 各種検査の検討: 身体的・脳器質的な異常がないかを確かめるための脳波検査やMRI検査の実施
  • 専門施設への紹介: クリニック内だけでは対応できない詳細な精密検査が必要な場合、提携する神経内科や脳神経外科へのご紹介

また、解離性障害の特性として、初めて行く場所への緊張や医師の前でのストレスにより、診察室で一時的に症状(健忘や混乱)が強まったり、逆に上手く説明できなくなったりすることがあります。そのため、事前に困っている症状や経過をメモに書き留めてご持参いただくことを推奨しております。

解離性障害(解離症)のよくある質問(FAQ)

Q. 自分が解離性障害かもしれないと思ったとき、受診の目安はありますか?

「気がついたら全く知らない場所にいた」「自分の行動の記憶がたびたび飛んでいる」といった状態が見られ、仕事や日常生活、人間関係に支障が出ている場合は、早期診断・早期治療のために、お早めに心療内科・精神科を受診することをおすすめします。

Q. カウンセリングの具体的な内容や期間はどのくらいですか?

患者様の状態やトラウマの深さに合わせ、認知行動療法や安心感を育む面接など、オーダーメイドのプログラムを組みます。期間は数ヶ月から数年に及ぶこともあり個人差が大きいですが、焦らず主治医や心理士と並走することが確実な回復に繋がります。

Q. 受診の際の注意点はありますか?

診察時の緊張により、うまく状況を話せなくなったり、一時的に記憶が曖昧になったりする特性があります。そのため、経過をまとめたメモの持参や、普段の様子をよく知るご家族・パートナー等に同伴していただくと、よりスムーズで正確な診断が可能になります。

まとめ

解離性障害(解離症)は、心が耐えきれないほどのストレスからあなた自身を守るために発している、緊急のSOSサインです。「記憶が飛んでしまう」「現実感がない」といったつらい症状は、決してあなたの心が弱いからでも、怠けているからでもありません。

しかし、適切なケアを行わずに一人で抱え込んでいると、生活や仕事に重大な支障をきたし、うつ症状などがさらに深刻化してしまう恐れがあります。

「もしかして解離かもしれない」と少しでも不安を感じている方、あるいは日常のメンタルの不調から抜け出したいと考えている方は、どうぞ安心してまいにちメンタルクリニック神田駅前院へご相談ください。働く方のライフスタイルに寄り添いながら、専門医があなたの心の痛みを紐解き、穏やかな毎日を取り戻すための治療を一緒に進めてまいります。

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